Sozo Venturesの中安杏奈・Iterative Scopesの高塚恒平です。投資家・スタートアップという異なる目線からですが、お互いアメリカのヘルスケアベンチャー界で奮闘する中で見聞きする様々な情報を日本語で届けたいと思い、ニュースレターを立ち上げることにしました。主に最新の米国ヘルスケアニュース・トレンド分析などを定期的にお届けする予定なので、ぜひ下記からポチッとご登録のほどどうぞよろしくお願い致します!
【特集】必見!Rock Health Q3ヘルスケアまとめレポート
RockHealthの記事はデジタルヘルス界では必見なのですが、中でも四半期ごとに投資額や領域をまとめてくれるこのシリーズは一番重要。特に2021年はコロナ禍の後押しがありオンライン診療を中心とした巨額の調達が続き”デジタルヘルスバブル”と呼ばれていましたが、ついに異常な市場環境は抜け出したとの見解です。本編から3つのポイントをご紹介:
① 2019Q4以来最も資金調達額が低く、特にレイトステージのディールが激減
全米のデジタルヘルス投資額は2021年に大きく飛躍し、$29.2 billionに達しました。一件当たりの平均投資額も約$40 millionと巨大化していましたが。一方で今年はその傾向も多少落ち着き、現時点での一件当たりの平均投資額が$27.3 millionとなっています。
2021年に見られたNoom ($540 million)、Ro ($500 million)、Mindbody ($500 million)のようなレイトステージ企業による巨大資金調達は、今年は影を潜めているようです。特にQ3におけるシリーズC以降の投資案件は全体の5%で6件。
今年、レイトステージの投資が少ない理由としては下記3パターンの可能性が挙げられています。
2021年のバブルを生かして今のうちに!と早めに資金調達を済ませている(実際2020年と比較して36%多い64社が2021年1年間で2回調達しています)
前ラウンドのエクステンション、インサイダーラウンド、ベンチャーデッドなどを活用し、外には出てこない資金調達をしている
リーンな経営体制にすることでランウェイを伸ばし様子見をしている
②投資領域トップは臨床業務改善テックやメンタルヘルス
投資領域で2021年は7位から1位に躍り出たのが”clinical workflow”(臨床業務改善テック)です。コロナ禍で医療現場の人材不足が深刻になる中、納得の結果ですね。セラピストのマネジメントプラットフォームGrow Therapy、クリニック向けSaaSのTebra、看護職向けHRプラットフォームIncredible Healthなどが挙げられています。
診療科領域としては、メンタルヘルスが相変わらず1位。2位としてはがん患者向けの個別化栄養療法を提供するFaeth Therapeuticsなどの案件を受けてオンコロジーがランクインしています。
③オンライン診療熱は冷めてきており、VR/ARなどその他のテックに注目
上の図からもon-demand healthcareの資金調達額が$4.9B→$1.7Bに減少していることがわかりますが、コロナ禍でブームだったオンライン診療系のスタートアップは、供給過剰、オンライン診療経由の処方薬の取り扱いに関するスキャンダル、過剰な広告への警鐘、などを受けて勢いが落ちています。代わりに注目を浴びているのは、VR/ARなど “decentralized”なテクノロジーです。VR/ARでは平均ディールサイズが2021年$18Mから2022年$34.2Mと倍増しており、具体的にはAR/VRを活用した創薬プラットフォームApprenticeなどが話題です。
【最近のホットニュース】
USPSTF(アメリカ合衆国予防医学専門委員会)は65歳未満のすべての成人が不安症に対するスクリーニングを受けるべき、そして65歳以上の場合は併せてうつ病のスクリーニングも受けるべき、と発表しました。コロナ禍前よりこのようなスクリーニングの強化の話題はありましたが、パンデミックを受けてさらにメンタルヘルスの重要性が注目されるようになり議論が急速に進んでいます。主にプライマリーケア医がスクリーニングを行うことが想定されており、デジタルヘルス領域では引き続きプライマリーケアとメンタルヘルスケアを融合するサービスやメンタルヘルスの状態をモニターするようなスタートアップへの後押しとなりそうです。
University of California San DiegoとUniversity of Washingtonの研究で、スマホのカメラで撮影した指先の動画からSpO2(動脈血酸素飽和度)を測定できるAIアルゴリズムが発表されました。6人を対象とした研究では、70-100%のレンジで測定できるとのことです。ケアがどんどん自宅に移行するという流れや遠隔モニタリングテックの開発が進む中、新たなデバイスを購入しなくてもバイタルサインが測定できる技術は非常に心強いですね。引き続き”home care”は注目領域です。
Googleは2021年に$2.1 billionで買収したFitbit社のウェアラブル技術とGoogle Cloudを活用し、病院での患者ケアを支援するサービスのパイロットをオランダで実施しました。この実験では心臓病のリスクがあると診断された 100 名を対象にFitbitを家で装着してもらい、暗号化された患者データがGoogle Cloud経由で病院に共有されました。今後、このようなデータを分析し、病院と共有することで病気の初期兆候を特定し、病状が出る前でも医師が詳しく調べたり、予防的治療を行うことが期待されます。
スマートウォッチの領域ではAppleが既に多くのシェアを取っていて、Googleはつい先日初のスマートウォッチ「Pixel Watch」を発表したところです。Cloudの強みを活かして今後Googleがどのようにウェアラブル×ヘルスケアで存在感を高めてくるか注目です。
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